膜厚計の種類と特長

膜厚計の種類

膜厚計にはさまざまな測定方式があり、測定対象となる膜の材質や厚さ、母材の種類、必要な測定精度などによって、適した方式が異なります。膜厚の測定方法は、大きく「接触式」「非接触式」「断面観察」の3種類に分類できます。

図1に、代表的な膜厚測定方法の分類を示します。当社が取り扱う膜厚計は、図中の黄色で示した「反射分光式」に該当します。膜厚計は、測定対象への接触の有無だけでなく、使用する光、磁気、超音波、X線などの違いによって、さらに細かく分類されます。

膜厚計を選定する際は、膜の厚さや材質、ワーク(母材)の材質、測定箇所の形状、測定環境、必要な精度などを確認することが重要です。また、装置の価格や操作性、測定速度なども方式によって異なるため、用途や使用目的に合った機種を選ぶ必要があります。

接触式・非接触式・断面観察に分類した膜厚計の種類
図1

接触式膜厚計の特長

接触式膜厚計は、プローブやセンサを測定対象の表面に接触させて膜厚を測定する方式です。比較的コンパクトで現場に持ち込みやすい装置が多く、塗装やめっき、樹脂被膜などの品質管理に広く使用されています。ただし、測定方式によって対応できる膜や母材が異なるため、測定対象に合った方式を選ぶ必要があります。

電磁式膜厚計

電磁式膜厚計は、プローブ内部の磁石と鉄や鋼などの磁性金属との間に働く磁力を利用して膜厚を測定します。磁力の強さは、プローブと金属素地との距離によって変化するため、その変化を膜厚に換算します。主に、鉄や鋼などの磁性金属上に形成された塗膜や樹脂被膜、非磁性めっきなどの測定に使用されます。ただし、塗膜自体が磁性を持つ場合や、測定面の形状・粗さが大きく異なる場合は、測定結果に影響を与えることがあります。

渦電流式膜厚計

渦電流式膜厚計は、コイルを内蔵したプローブから高周波の磁界を発生させ、アルミニウムや銅などの非磁性金属に生じる渦電流を利用して膜厚を測定します。渦電流の状態は、プローブと金属素地との距離によって変化するため、その変化を膜厚に換算します。主に、非磁性金属上に形成された塗膜や樹脂被膜、アルマイト層などの測定に使用されます。ただし、母材の導電性や厚さ、測定面の形状・粗さなどによって、測定結果が影響を受けることがあります。

超音波式膜厚計

超音波式膜厚計は、プローブから測定対象に超音波パルスを送信し、塗膜と素地、または異なる層の境界で反射した超音波が戻るまでの時間を利用して膜厚を測定します。超音波が材料内を伝わる速度は材質ごとに異なるため、あらかじめ設定した音速と伝播時間から膜厚を算出します。主に、塗膜や樹脂被膜、ライニングなど、比較的厚い膜の測定に使用されます。ただし、材質に応じた音速の設定や校正が必要であり、表面の状態や膜と素地の組み合わせによっては、測定結果が影響を受けることがあります。

非接触式膜厚計の特長

非接触式膜厚計は、光やX線などを測定対象に照射し、プローブを表面に接触させずに膜厚を測定する方式です。柔らかいフィルムや微小な部品、傷や変形を避けたい製品などの測定に適しています。測定方式によって、透明膜、多層膜、金属めっきなど、得意とする測定対象が異なります。

反射分光式膜厚計

反射分光式膜厚計は、幅広い波長を含む光を測定対象に照射し、膜表面で反射した光と、膜内部を通過して基板表面で反射した光との干渉スペクトルを解析することで膜厚を測定します。測定対象に触れることなく、非破壊で薄膜を測定できることが特長です。

主に、透明または半透明のフィルム、ガラス、半導体、光学膜、各種機能性コーティングなどの測定に使用されます。多層膜の場合は、各層の境界面で反射した光を解析することにより、条件に応じて各層の膜厚を測定できます。ただし、膜や基板の光学特性、膜構成、表面状態などによって、測定の可否や精度が異なります。

反射分光式膜厚計の詳しい仕組みについては、 反射分光式膜厚計の測定原理・仕組み をご覧ください。

静電容量式膜厚計

静電容量式膜厚計は、センサと基準面となる導体との間に測定対象となる絶縁体を配置し、そのときに生じる静電容量の変化を利用して膜厚を測定します。測定対象がない状態でゼロ点調整を行い、既知の厚さを持つ基準試料を使用して校正したうえで、測定値を膜厚に換算します。

主にフィルムやシート、絶縁膜などの測定に使用されます。ただし、測定対象の誘電率や温度、湿度、電極間隔などによって、測定結果が影響を受けることがあります。

蛍光X線式膜厚計

蛍光X線式膜厚計は、測定対象にX線を照射したときに発生する、元素固有の蛍光X線を利用して膜厚を測定します。蛍光X線のエネルギーや強度を解析し、被膜と下地に含まれる元素の違いや量を確認することで、被膜の厚さを算出します。

主に、金、ニッケル、銅などの金属めっきや金属被膜の測定に使用されます。膜厚とあわせて元素組成を確認できる場合がありますが、測定できる材料の組み合わせや膜厚範囲には制限があります。

断面観察による膜厚測定

断面観察は、測定対象を切断して膜の断面を露出させ、光学顕微鏡や電子顕微鏡などを使用して膜厚を直接測定する方法です。膜の厚さだけでなく、層の構成や界面の状態、膜内部の欠陥などを確認できることが特長です。

一方で、試料の切断や研磨などの前処理が必要であり、原則として測定対象を破壊する方法となります。多層膜の構造確認や、ほかの膜厚測定方式で得られた測定結果の検証などに使用されます。

膜厚計の種類・測定方式の比較

膜厚計は、測定方式によって対応できる膜や母材、測定可能な膜厚範囲、接触の有無などが異なります。代表的な膜厚測定方式の特長と注意点を、以下の表にまとめます。

測定方式 主な測定対象 測定方法 主な特長 主な注意点
電磁式 鉄や鋼などの磁性金属上に形成された塗膜、樹脂被膜、非磁性めっき 接触式 操作が比較的簡単で、塗装やめっきの現場測定に適しています。 素地が磁性金属である必要があります。塗膜の磁性や測定面の形状、粗さなどの影響を受けることがあります。
渦電流式 アルミニウムや銅などの非磁性金属上に形成された塗膜、樹脂被膜、アルマイト層 接触式 非磁性金属上の絶縁被膜を、非破壊で比較的短時間に測定できます。 素地の導電性や厚さ、測定面の形状、粗さなどの影響を受けることがあります。
超音波式 塗膜、樹脂被膜、ライニングなどの比較的厚い膜 接触式 超音波の伝播時間を利用して膜厚を測定します。片側から測定できる方式もあります。 材質に応じた音速の設定や校正が必要です。表面状態や膜と素地の組み合わせによって、測定結果が影響を受けることがあります。
反射分光式 透明または半透明の薄膜、フィルム、ガラス、半導体、光学膜、多層膜 非接触式 光の干渉スペクトルを解析することで、非接触・非破壊で薄膜を測定できます。条件によっては多層膜にも対応できます。 膜や素地の光学定数、膜構成などの測定条件を設定する必要があります。不透明な膜など、測定が難しい対象もあります。
静電容量式 フィルム、シート、絶縁膜などの絶縁材料 接触式または近接式 センサと導体面との間に生じる静電容量の変化を利用して、絶縁材料の厚さを測定します。 測定対象の誘電率や温度、湿度、電極間隔などの影響を受けることがあります。
蛍光X線式 金、ニッケル、銅などの金属めっきや金属被膜 非接触式 蛍光X線を利用し、被膜の厚さと元素組成を測定できます。微小部の測定にも使用されます。 測定できる材料の組み合わせや膜厚範囲に制限があります。装置の設置環境やX線に関する安全管理も必要です。
断面観察 単層膜、多層膜、塗膜、めっき、各種コーティング 破壊検査 測定対象を切断し、光学顕微鏡や電子顕微鏡などで膜の断面を直接観察できます。 試料の切断や研磨などの前処理が必要です。原則として測定対象を破壊する方法となります。

膜厚計を選定するときのポイント

膜厚計は、測定方式によって対応できる膜や母材、測定可能な膜厚範囲が異なります。機種を選定する際は、膜と母材の材質、膜厚の範囲、単層膜か多層膜か、接触測定が可能か、必要な測定精度や測定速度などを確認することが重要です。

また、研究開発、品質管理、生産ラインなど、使用する場所や目的によっても適した装置は異なります。

当社が取り扱う反射分光式膜厚計については、 膜厚計の製品一覧 をご覧ください。

当社では、反射分光式膜厚計の販売、レンタル、受託測定に対応しています。 測定対象に適した機種や測定方法が分からない場合は、 お気軽にお問い合わせください。

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